「親が亡くなって車が残ったけれど、どうやって売ればいいのだろう」とお悩みの方は少なくありません。
結論から申し上げますと、故人名義の車はそのままでは売却できません。まず相続人への名義変更が必要で、その後に売却という流れになります。手続きはやや複雑ですが、この記事をお読みいただければ何をすべきかわかるようにまとめておりますので、ご安心ください。
故人の車を売るまでの全体の流れ
ステップは大きく3つ
- 相続人を確定する:誰が車を相続するか決める
- 名義変更する:故人名義から相続人名義に変更する
- 売却する:名義変更が完了したら、通常の車と同じように売却できる
「面倒だからそのまま乗り続けよう」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、名義変更をしないまま乗り続けると、自動車税の問題や保険の問題が発生いたします。早めに手続きすることをおすすめいたします。

ステップ1:相続人を確定する
遺言書がある場合
遺言書に車の相続先が指定されている場合は、その内容に従います。遺言書が公正証書遺言であれば、手続きもスムーズに進みます。
遺言書がない場合
遺言書がない場合は、法定相続人全員で「遺産分割協議」を行い、誰が車を相続するか決める必要がございます。法定相続人は配偶者、子供、親、兄弟姉妹の順で決まります。
車の場合、実際に車を使う方が相続するか、売却して代金を分けるかのどちらかが一般的でございます。売却する場合でも、まずは相続人の1人に名義を移す必要がございます。
査定額が100万円以下なら手続きが簡単に
ここが大きなポイントです。車の査定額が100万円以下の場合、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」という簡易的な書類で手続きができます。相続人全員の署名・押印が不要で、車を相続する方1人の署名・実印だけで済むため、手続きが大幅に簡略化されます。
ステップ2:名義変更に必要な書類
査定額100万円超の場合
- 故人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)
- 相続人全員の戸籍謄本:故人との関係がわかるもの
- 遺産分割協議書:相続人全員の署名・実印が必要
- 相続人全員の印鑑証明書
- 車検証(自動車検査証)
- 車を相続する人の車庫証明書
- 手数料納付書:運輸支局で入手
- OCR申請書(第1号様式):運輸支局で入手
査定額100万円以下の場合
- 故人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)
- 遺産分割協議成立申立書:車を相続する人1人の署名・実印でOK
- 車を相続する人の印鑑証明書
- 車検証(自動車検査証)
- 車を相続する人の車庫証明書
- 手数料納付書・OCR申請書
遺産分割協議成立申立書のひな形は国土交通省のサイトからダウンロードできます。

軽自動車の場合
軽自動車は手続きが普通車よりシンプルでございます。遺産分割協議書や戸籍謄本が不要で、新しい使用者の住民票と認印があれば名義変更ができます。手続き先は軽自動車検査協会になりますのでご注意ください。
ステップ3:売却する
名義変更後は通常の売却と同じ
相続人への名義変更が完了したら、あとは通常の中古車売却と同じ流れでございます。買取業者に査定を依頼して、契約・引き渡し・入金という手順になります。
名義変更と売却を同時にやってくれる業者も
これが最も手間のかからない方法ですが、多くの買取業者は相続による名義変更と売却を同時に代行してくれます。必要書類さえ揃えれば、面倒な運輸支局への手続きを業者が行ってくれるため、非常に助かります。
この場合、故人名義のまま買取業者に引き渡して、業者が「相続人への名義変更→買取業者への名義変更」を一括で処理してくれます。手間をかけたくない方にはおすすめの方法でございます。
故人の車を売却する際の注意点
放置すると自動車税が故人宛てに届き続ける
名義変更も廃車もしないまま放置すると、毎年4月1日時点の所有者(故人)宛てに自動車税の通知が届き続けます。相続人に納税義務が発生しますので、使わない車を放置するのは損しかございません。
車検が切れていても売却できる
故人の車の車検が切れていても売却は可能でございます。ただし公道は走れませんので、出張査定に来てもらうか、引き取りサービスのある業者を選びましょう。
相続放棄した場合
相続を放棄した場合、車を含むすべての遺産を受け取れなくなります。車だけ相続して他を放棄するということはできませんので、ご注意ください。相続に関する詳しい情報は裁判所のサイトでも確認できます。
自動車保険の手続きも忘れずに
故人が加入していた自動車保険も手続きが必要でございます。相続人が車に乗り続ける場合は名義変更(契約者変更)、売却する場合は解約の手続きを行いましょう。等級の引き継ぎが可能な場合もありますので、保険会社にご確認ください。

故人の車の処分方法は売却だけではない
廃車にする
価値が低い車や動かない車は、廃車にする選択肢もございます。永久抹消登録をすれば自動車税の課税が止まりますし、自賠責保険や自動車重量税の還付も受けられます。廃車買取業者なら無料で引き取ってくれるところが多いです。
相続人が乗り続ける
相続人が車を使う場合は、名義変更と保険の切り替えだけで問題ございません。その場合も車庫証明の取得は必要ですので、忘れずに手続きしましょう。
寄付する
NPOや自治体に車を寄付するという選択肢もございます。一部の団体では車の寄付を受け付けており、社会貢献にもなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 相続人が複数いて意見がまとまらない場合は?
A. 遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。車だけが争点になることは少なく、他の遺産と合わせて協議されることが多いです。車の価値が低い場合は、売却して代金を分けることで合意しやすいケースもございます。
Q. 故人名義のまま車を運転しても大丈夫ですか?
A. 法的には、相続が発生した時点で車は相続人の共有財産になりますので、相続人が運転すること自体は違法ではございません。ただし、保険の名義が故人のままだと、事故時に保険金が支払われない可能性がございます。早めに保険の手続きを行いましょう。
Q. 故人の車のローンが残っている場合は?
A. ローンが残っている場合、車の所有者がローン会社になっていることが多いです。ローン残債を完済して所有権解除の手続きが必要になります。ローン残債が車の価値を上回る場合は、相続放棄を検討されたほうがよいかもしれません。日本弁護士連合会のサイトで相談窓口を探すことができます。
Q. 相続手続きにかかる費用はどれくらいですか?
A. ご自身で手続きする場合は、戸籍謄本(450円〜)、印鑑証明書(300円程度)、車庫証明(2,500〜2,900円)、名義変更手数料(500円)で、合計1万円以内で済むことが多いです。行政書士に依頼する場合は、2〜5万円程度の報酬がプラスされます。
まとめ:故人の車は早めに手続きしましょう
故人の車の売却は、通常の売却に比べて手続きが多く大変ですが、放置するとデメリットしかございません。自動車税は毎年かかりますし、車の価値も時間が経つほど下がってまいります。
多くの買取業者が相続車の名義変更を代行してくれますので、すべてをご自身で行う必要はございません。まずは買取業者にご相談いただき、必要な書類を教えてもらうところから始めてみてください。
大変な時期に面倒な手続きをするのは辛いものですが、書類さえ揃えれば業者がほとんど対応してくれますので、あまり構えずにお問い合わせいただければと存じます。


